日本人と中国人

思い込みがないか,自分の文化を疑ったことはありますか?

知らないものどうしで

いつか夫とともに飛行機に乗ったときのことである。(1990年代)

私は、飛行機の中では、本を読んだり、うとうとしたり、とにかく一人を楽しみたいタイプである。でも、隣の夫はどうも落ち着かない様子。つまらなそうであった。そのときスチュワーデスがお茶のサービスにやって来た。夫はこのときとばかりに「小姐~」と声をかけた。ナンパではない。誤解のないように。とにかく、おしゃべりしたくてうずうずしていたのだ。それで水を得た魚のようにその小姐としゃべり始めたのである。結局私も巻き込まれて3人で話し込むハメになってしまった。彼女は中国の人で、とても楽しいひと時となった。


仕事の事とか、家族の事とかいろいろ話していると、何を血迷ったか彼はいきなり「ところで小姐、1ヶ月のお給料いくらもらっているんですか?」なんて尋ねるではないか。「ちょっと、そんなこと聞いたら失礼だよ。」と彼を睨んだ。しかし、彼女はキッパリ「1ヶ月3000元です。」と答えてくれた。私は彼女が、気を悪くしたのではと心配したが、むしろ誇らしげな表情が印象に残った。中国では、こんな会話も成立するかとビックリすると同時に感心した。日本では、絶対あり得ない。


夫にとっては、電車やレストラン、道を歩いていて、知らない人に話しかけるなんてお茶の子さいさいなのである。中国ではそこから友情が芽生えたり、ビジネスが始まるということだって珍しくないのだ。アメリカやヨーロッパでも、レストランで横のテーブルに座った人が、「それ、おいしい?メニューのどこにある?」なんてひと言をきっかけに会話が始まるのは、とっても普通のことである。

ところが以前の私は、自分の友人と「あれ、おいしいのかな?」とあれこれ思案したあげく「あなた聞いてみてよ。」「いやだ。あなたこそ聞いてよ。」なんて押し付けあうことがよくあった。私たち日本人は見知らぬ人に話しかけるという習慣がないし、それを「恥ずかしい」と感じる文化を持つからだ。


 その端的な例が欧米人が、JRなどの電車で足を踏まれたとき「アウチ!」と大声を出す事だ。このとき踏まれた本人と踏んだ犯人とどちらが、周りから非難を受けるか?答えは前者。つまり踏まれて「アウチ」と叫んだ方だ。「痛い」を「痛い」といって何が悪い?と思われるかもしれない。しかし、「恥じらいの文化」が、これを非難したくなるのだ。レストランでの件も同様である。


 夫と暮らすうちに私も外国人に近くなってくる。先日電車で足を踏まれて

「痛い!」

と声を出している自分にハッと気づいた。

 そのとき、周りにいた日本人の顔と言ったら、

ハトが豆鉄砲を食らったみたい・・・・・ふふふ