そんなところで交渉しないで
中国人の夫と日本で暮らしていて、一番恥ずかしかったのは、「えっウソ」と思うところで、交渉を始めてしまうことだった。前回のレストランなどは、日常茶飯事。実はこんなこともあった。
子供といっしょに遊園地に行ったとき(1990年代)のことだ。楽しく遊んで、少し早めに帰ろうということになったとき、ふと気が付くと乗り物券がいくらか余っていた。日本人なら普通「もったいないけどねー。」で終わりだ。ところが、夫はここで、終わらせない。よりにもよって
「これ、売ろうよ。」
なんて言い出したのだ。券売り場のあたりで、人をつかまえ、10%ぐらい安くして、売るというのだ。
えーっ!ウソでしょー!と叫んだ。この手のことには十分慣れてきたところだったが、やっぱり驚いてしまった。幼い子供達はというと、彼らには日本人の常識ってものが初めからないので
「いいね。いいね。面白い!」
なんて目を輝かせて喜んでいる。「もー、こっちの気も知らないで。これじゃ、ダフ屋じゃない。怪しすぎる!ぜったいに変な目で見られてしまう。わたし、知―らない!」と夫と子供達から離れて「私はこの人達と何の関わりもありません。」とソッポを向いていた。
ところが・・・彼らは嬉しそうに戻ってきた。すぐに売れたし、とても喜んでもらえたと言う事だ。
今度こそは、変な目でみられると思っていたのに・・・・またまた期待(?)を裏切られる結果となった。
私は交渉しなくても生活できる文化の中にいる。だから、いざ、交渉したいと思ったときでも引いてしまうことが多かった。「ちょっと聞いてみようかな。」とか「頼んでみようかな。」とか「文句言いたいな。」とか思うときでも「ま、いいか。」で済ませてしまったのだ。ある意味で、チャンスを逃していたように思える。
ところが、夫の影響で、だんだん交渉するようになってきた。すると今度は、私が回りの日本人を見ていて歯がゆく思うことが出てきたのだ。
先日も友人と朝マックにいった。そこで、パンケーキを頼んだのだが、彼女は、食べながら「ちょっと焼き方が足りないなー。」とぶつぶつ言っている。ふと見ると確かに焼き色が白っぽくて「生」を思わせる。思わず
「取り替えてもらえば?」
と言うと「いいよ。半分,食べちゃったし・・・・」と消極的。そこで「私に任せておいて!」と引き止める彼女を無視して、取り替えてもらうように頼んだ。お店の人はマックスマイルですぐに応じてくれた。友人はというと「ウソー替えてくれるの?」と大変驚いていた。
いつかきた道・・・きっと彼女は恥ずかしかったんだろうなー。
以前の私のように。