日本人と中国人

思い込みがないか,自分の文化を疑ったことはありますか?

けんかOK!

 前回、中国人の話し方がけんか腰に見えるということを書いたが、実は本当のけんかもとても多い

中国の街を歩いている(1990年代)と良く「けんか」の場面に出くわすので野次馬さんには面白いかもしれない。たいていは、口げんかであるが、日本と違うところは、野次馬たちも二手に分かれてけんかに参加し、ちょっとしたディベートの場に早変りするところだ。現代の日本人には考えられないオープンさでなんだか楽しい。


 中国人の夫には、10歳ほどしか年の変わらない甥っ子がいる。彼は8年ほど前に日本に来て留学し、今は日本の企業に勤めている。甥っ子は普段、叔父である夫の言うことを聞いて従順であるが、時には、意見がぶつかることもある、あるとき、何かのきっかけで言い争いになり、とうとうけんかになってしまった。私は戦々恐々としてことの成り行きを見守っていたのだが、夫は電話口で「わかった。」と言って電話を切ってしまった。絶交したというのだ。


エーっ日本にいるたった一人の親戚なのに・・・・。私の心は悲しくなり、暗く沈んでいった。「しょうがない。甥っ子も大人だし、日本でもたくましく生きていけるでしょう。」と自分に言い聞かせて無理やり納得した。


しばらく経ったあるとき、夫の仕事のことで中国人の助けが必要になった。私が、誰かいい人いないかなーと考え始めると、夫は何の疑いも無く言った。「彼に頼もう。」甥っ子に頼むというのだ。「そんなこと言ったって絶交しているんじゃないの?」と私が突っ込むと「別に気にしないよ」という。「あなたが気にしなくても相手は赦さないでしょ。絶交なんだから。」


ところが、夫が甥っ子に電話すると甥っ子もまるで何も無かったように話し始めるではないか。いったい、あのけんかは何だったの?絶交はどうしちゃったのよ?
結局私だけが、なんだかんだと気をもんで疲れただけだったという結末となった。それからしばらくして、夫がまた「絶交だ」という。性懲りもなく私はまたまた心配しまくった。今度こそ本当にお別れだと・・・・・・ところがこのときもすぐに仲直りした。何のことはない。甥っ子とは3回も4回も絶交しているのだ。これじゃ絶交とは言えない。でも気にしていないのは夫のほうだけで、甥っ子はめちゃくちゃ恨みに思っているのではないか?と思って尋ねると甥っ子の方も本当に気にしていないという。

 
さすがの私も悟った。要するに中国人はすぐにけんかをするが、けろっとしていてまたすぐ仲直りするのだ。日本人の私にはどうしても理解できない感覚である。だって日本人だったら、けんかなんかしたら、その相手とは一生付き合わないということになりかねない。だから、けんかしないように細心の注意と最大の忍耐を強いられるのだ。
中国人はけんかしやすい。裏を返せば、けんかしてもすぐ忘れてくれるということだ。これは本当に爽快だ。どちらかといえば執念深い私にはうらやましい気もする。でも、まあいいか。


この執念深さのおかげでコラムが書けるわけだから・・・。