日本人と中国人

思い込みがないか,自分の文化を疑ったことはありますか?

夜の訪問者

中国人の夫との新婚生活は珍事件につぐ珍事件の日々であった。

今回は「夜の訪問者事件」を紹介しよう。夜、10時過ぎとかに夫の友人が遊びに来るというとんでもない事件である。それは、いつもドアを叩く音で始まった。
「トントントン、○○さん。遊びにきたよ。」
え?何?今ごろ遊びにきた?ジョーダンでしょ?その頃私は、10時には寝る習慣だったのでもうしっかりとふとんに入って寝る体制である。夫がドアのところに応対に出てくれる。もう寝ているし、夜遅いし、当然断わってくれると100%信じていた。ところが、夫は言った。


「ああ、きたの?入ってよ」


一瞬耳を疑った・・が、なんと夫はその友人を中に入れてしまうのだ。「えーっ、ウソでしょ?」というと「だいじょうぶ。気にしないで。寝てても、いいよ。」という。そう言われても困るのでしぶしぶ付き合う。そんなことが何回かあった。ときには本当に寝ている布団の片隅に夫と友人が座って夜を徹して話し込んだりするのだ。というわけで、トントンという音がするたびドキーンとしてしまう。夜遅くというのも困るが、いきなりというのが、精神的にもこたえる。どうして夫の友人は夜いきなり来るのか?と思った。


実はこれが中国ではあたり前のことだとわかったのは2年後(1990年頃)に初めて中国に行ったときである。つまり中国の生活習慣だったのだ。彼らはよく訪問しあう。夜でも。それもいきなり、つまり「アポなし」が普通である。日本では私の小学生の娘だってアポをとるが、中国では電話が発達した今でも、アポを入れないことが多い。さらに「~時に行くから」というと「ご飯の作らなくては」と相手に余計な気を遣わせてしまうので、良くないのだそうだ。なるほど。

さらに面白いことを聞いた。夫の実家にある日いきなり「やあ、遊びに来ましたよ。」と訪れる人がいた。ところが誰も彼を知らない。「いったい誰なんだろう?」と皆首をかしげたが、とにかく客人としてもてなしたという。信じられないことだが、なんとも微笑ましい。少したって義父が、数ヶ月前旅行先で出会った人だと気づいて、皆で大笑いしたという。めでたし、めでたし・・・・。これは極端な話かもしれないが、こんな事だってありえるっていうのが、中国の面白いところ。ドラマや映画の一コマのようで感動する。


アポなし訪問-はじめはビックリして戸惑う習慣であったが、これを逆手に取れば

「中国人のところにはいきなり行ってもいい。」

とも言える。それに気づいてからは、この習慣を心から楽しんでいる。(2000年頃)

 

文化の違いっていいもんだ!